2012年05月25日

光の教会


教会でのお別れははじめてでした。



そしてさらに今回の場合、そもそも弔問に行ってよいのかどうか、ということすらよくわからなかったのですが、Yさんの最後の姿を一目見てお礼の言葉を伝えたかったので、前夜式の日の午後にさしかかってから教会にうかがう決心をしました。

Yさんは、僕の勤める職場で臨時採用にて働いていらっしゃった方。
半年にも満たないとても短いおつきあいとなりましたが、僕は大変お世話になりました。
過去に病に倒れた影響で痛い場所がいくつかあった風でしたが、それでも70歳代に差し掛かるまでまだあと3年ほどあってついこの間まで元気だったのに、急に亡くなってしまったのです。

奥さんも子どもさんもなく、身寄りがほとんどない、というようなことを人づてに聞いていました。
それも、彼と知り合ってまだ数ヶ月の僕が彼を弔うために教会を訪ねようと思った理由のひとつ。そんなことを考えて足を運んだなどと書くと僕が驕っているように思われるかもしれませんが、しかし教会にまったく人がおらずあまりに寂しい雰囲気であったなら何だか悲しい、と正直思ったのです。

カーナビの案内に従って信号を左折して細い道に入ってすぐ。
とても小さな教会が見えました。
駐車場らしきところに男性が二人立っていて、車を誘導してくれたのでちょっと安心。
さらに受付には既に数名の男女が並んでいたので、さらに安心。
五月の天気が良い日の夕暮れは爽やかです。

Yさん、みんなが来てくれたよ、寂しくないね

僕は心の中でそうつぶやきました。


手作りで建てたかのような造り。
派手さは無く質素。
こじんまり、という言葉を使っても良いのなら、まさにそういう感じの教会でした。
玄関が開いているので小鳥の鳴き声などとともに外の喧騒が耳に届きます。
席に着いて一息ついてしばらくじっとしていたら、どこからか小さなこどもの声が聞こえてきました。
外から?
壁の向こうから?
天井の方から?
お母さんに向かって何か話しているよう。
二歳か三歳ぐらいのこどもの話し方。
そこに加減の利いた優しいパイプオルガンの音が重なりました。
ああ、そうか、きっとこの教会の神父さんのこどもさんだ。
教会に入る前に見た全体の造りを思い出し、神父さんのご自宅が教会と一緒になっていることに気づきました。
僕はもうその雰囲気だけで癒されてしまい、Yさんはこんな雰囲気の中で見送られて幸せだなと感じました。

右側列の席にはご親族の方々が。
Yさんは末っ子とのことで、Yより年上の方が多かったように見えました。Yさんのことを悼むために遠くからいらっしゃった方もいたようです。
讃美歌を歌いましょうと神父さんが告げると、駐車場で案内してくれた男性や受付に並んでいた女性たちがおごそかに前に並ばれました。そして美しい歌声で讃美歌を歌い始めました。
彼らは教会に関係する方たちでした。
そうか。こんなに自然な感じでいてくれるのだな。
僕は感心しました。
さりげないけれど優しさに溢れる立ち振る舞いは素晴らしいと思いました。

神父さんが、教会とYさんの話を始めました。
Yさんが身内の方のすすめで教会を訪れるようになったのはほんの五、六年前の話だそうで、最初は熱心ではなかったそうですが次第に教会に来ることを楽しみに思うようになり、ここ数年は日曜は必ず足を運んでいたとのこと。
まだ三十代前半らしき神父さんご夫妻と二人のお子様とも親交があった様子。
特にまだ幼いお子様たちのことを自分の子か孫のようにとても可愛がっていたそうです。
職場の誰に聞いてもこんな話を知っている人はいなさそうで、Yさんの知られざる一面を垣間見た気がしました。

すべてがとどこおりなく進み、献花をするときになって青い棺の中に休まれているYさんの顔を拝見しました。
とても格好の良いチェックのスーツに身を包んだYさんは最後までお洒落だったので、着せてもらえて良かったね、と声をかけました。


帰宅する途中の車の中で、安藤忠雄さんのあの建築を思い出しました。
十字架のないあの教会です。
コンクリートを打ちっぱなした壁が十字に切り取られ、外からの自然の光が教会内に十字架を形成するあの教会。

曇った日には曇った日の。
雨の日には雨の日の。
晴れた日には晴れた日の。

光と影。

光の下にでていないと駄目なんて決まりはないのです。
影があるから光がある。
光があるから影がある。

僕が訪れた教会は、荘厳できらびやかという場所とは正反対の場所だったけれど、人々の優しさというあたたかい光に包まれていました。
Yさんは
ここに来ると心地よい、心が和む
とおっしゃっていたとのこと。
その気持ちがよくわかりました。



































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