その昔僕は浅草界隈に3年ほど住んでいました。
正確には
本所吾妻橋あたりだったのですが、会社に行くには銀座線を利用するのが便利だったため、
吾妻橋を渡って浅草駅まで歩いていたのです。
三十代の頃の僕は
池波正太郎の本を愛読していました。特に、鬼平こと長谷川平蔵が活躍する
鬼平犯科帳が大好きだったので、話の舞台のひとつとして登場する本所に住むことを夢見ていたのです。
出張や帰省にて東京を離れて手土産を持っていくことになったときなどは、
「浅草の近くに住んでるんです。」
とか
「本所に住んでます。」
と言いたいがために、よくこの
舟和の芋ようかんを買い求めたものでした。
もちろん僕自身この芋ようかんが大好きであり、行く先々の人たちにぜひ食べてもらいたいと思っていることが、お土産として持参する最大の理由であることは言うまでもありません。
とっても美味しい舟和の芋ようかんですが、苦手、という方もいらっしゃいます。
「戦争中は食糧不足で毎日芋ばかり食べていたからね・・・。こういうのはどうも苦手・・・」
舟和の芋ようかんを食べたことがない数人の年配の方々からそう言われたことがあるのです。
そんなとき僕は
「それは大変でしたね・・・。食べたくなくなるのも無理はないと思います。でも、しかし、騙されたと思ってどうかひとくち召しあがってみてください。あたたかい渋めのお茶と一緒にどうぞ。」
とあえて言うようにしています。